新刊のお知らせ
2017.12.4
白井の新刊『福を招く旧暦生活のすすめ』(サンマーク出版)が発売になりました。
今回の本は、これまでの数年間、季節のことや旧暦についてあれこれ考えたり、機会をいただいて書店さんやお店さん、カルチャーセンターさんなどで話したりしたことを、あらためて一冊にまとめたいと思い、執筆したものです。
いまの暮らしの中で、なにか素敵なこと、大事なことを感じ、見つけ、それを抱きかかえていけますように、と書きました。
この本の「はじめに」を以下に引用します。よかったら、どうぞ読んでください。
→「はじめに」を読む
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はじめに
福を招き、幸せになりたいと願う。
その気持ちは、なにより大切なもの。
福や幸せが訪れますように──。
私たちは時に、お参りをしたり、年中行事をしたりするなかでさまざまな願い事をします。家族の健康や、商売繁盛、恋愛成就……。
その一つ一つが、とても大切なこと。
では、昔の人はどんなふうに福を招き、幸せを呼んできたのでしょうか。
古くからある知恵を、いまあらためて知ることは、あなたにとっての大切な願いをより大切にできることだと思います。
この本では、五節句などの年中行事から春夏秋冬のならわしまで、福招きや、祈願成就にまつわる昔ながらの知恵を紹介しています。たとえば……
新年の幸せを願って、お正月にごちそうをいただくのはなぜ?
七夕のならわしと縁結びには、どんな関係があるの?
七五三のお祝いをするとき、どうして地元の神社にお参りするの?
冬至の日に運気を上げる運盛りって、どんなこと?
などなど、これらはかつて、人が旧暦とともに暮らしていたころ、生活のなかで息づいてきた知恵です。
その一つ一つには、昔もいまも変わらない人々の願いが込められています。
年中行事などのしきたりの由来をひもといていくと、そこにはさまざまないわれがあることがわかります。
そのなかには、幸せを願う知恵に由来するしきたりもあります。
古い行事には、はるか数千年前のものもありますが、それほどの長い歳月、いまに至るまでつづいていることに驚かされます。
人が幸せになりたいと願う心は、それほど尊い、ということではないでしょうか。
この本から、一つでも二つでも、日々を豊かに、幸せに暮らすきっかけを見つけていただけたなら、これに勝るよろこびはありません。
どうかあなたの毎日に、旧暦の知恵を通して、福や幸せが舞い込みますように。
12月のイベント・ワークショップ
2017.12.9-11
12/9(土)トークイベント「旬のごはんと旧暦の知恵」
@「かぞくのアトリエ」(東京・代々木)
料理家のワタナベマキさんと、旬の食や旧暦などについてお話します。
子育て中のおかあさん、おとうさんにもいらしていただけたら幸いです。
くわしくはこちらに。
かぞくのアトリエ ホームページ
12/10(日)ワークショップ「言葉を探す旅」
@「キのうえ」(東京・渋谷)
言葉を大事にすることは、心を大事にすること。
自分の中から出てくる言葉に、耳をすましてみませんか?
ゆっくり、ゆっくり、とした時間の中でワークショップをします。
くわしくはこちらに。
earth garden ホームページ
12/11(月)『福を招く旧暦生活のすすめ』刊行記念トークイベント
「からだのこと、くらしのこと、しあわせのこと」
@本屋B&B(東京・下北沢)
神楽坂の素敵なお店「jokogumo」店主の小池梨江さん、布ナプキンの火付け役でもあるクリエイターのユーゴさんと3人でトークします。あわただしい日々の中にも、からだをいたわったり、一日をていねいに過ごしたり、どうしたらできるかな? といったテーマで話せたらと思います。
くわしくはこちらに。
本屋B&B ホームページ
琉球新報「落ち穂」第5回、第6回
2017.10.3
琉球新報「落ち穂」第5回(9/15掲載)、第6回(10/3掲載)が掲載されました。この二人の詩人に出会えたことは、ぼくにとって、かけがえのない財産となっています。
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「神は細部に」
詩を本格的に書きはじめたのは31歳の冬だった。それから1年ほど経ったあるときふと、ほかにもどこかに詩を書いている人はいるんじゃないかと探してみたら、インターネットというのは便利なもので一瞬にして見つかった。
『詩学』という詩の雑誌が主宰するワークショップが当時あり、思いきって行ってみると、自分と同じように詩を書いている人たちに会えた。そこで講師をしていたのが、詩人の佐藤正子さんだった。
ワークショップに持っていったのは、のちに第一詩集の表題作になる「心を縫う」という詩。その詩を、佐藤さんは温かく受けとめてくれた。おかげでそれからいまに至るまで、どれほど励まされ、支えられてきたか知れない。
なぜかわからなくもないけれど、ぼくの詩はよく頭ごなしに否定される。「こんなものは詩じゃない」「おれは認めない」云々。それでもなにを言われようと大して気にしなかった。
誰に頼まれたわけでもなく、誰のために書くわけでもなく、ただ書きたくて書く詩というものを、ほかの誰にも譲り渡したくなかった。なによりも自由でありたかった。
ただ、もし不遇ばかりが続けば、きっと辛かっただろうとは思う。でもぼくの心には、佐藤さんがいてくれた。ぼくが歩む道だってひとつの詩の道だと、1度でも告げられれば十分で、あとは好きに書けばいい。自分を全面的に肯定してくれる人に出会えたのは、つくづく幸運なことだった。
佐藤さんが語ってくれた話は、いまも耳に残っている。
たとえばこんな格言を、くっきりと宙に文字を書くように声に出すさまからは、詩への愛がありありと感じられた。
「神は細部に宿り給う」
詩の一行、一句、一語、一音から余白に至るまで微に入り細に入り磨きあげたとき、詩は生まれる、とそんな話をする佐藤さんの声には詩作の喜びがあふれていた。
はじまりが祝福に満ちていたことは、その後のぼくの詩の歩みに大きく影響したと思う。誰かに無条件に受け容れられるとき、人は伸びる。この信念は、佐藤さんからぼくが身をもって授かったものだ。
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「しなやかに弱く」
詩に向きあうとき、大事にしている言葉がある。
「しなやかに、弱く」
詩人の貞久秀紀さんが、ぼくの第一詩集の書評に書いてくれた言葉だ。
以来、このようでありたい、と心に留めながら、たびたび踏み外してしまう。怒りに駆られて、頑なに、強く、突き進もうとしてしまう。そんなことをしても、不毛な結果が待つだけなのに。
最近は少しだけわかってきた気がする。自分の心がどんなときにしなやかでいられるか、どんなときにこわばるか。どういう感情にとらわれたら、力押しの強さばかりを求めて、弱い自分を忘れてしまうか。
なにかひどいできごとが起きたとき、それに対して心のままに怒りを覚える自分を肯定したい。怒りはけっして悪いものではない。ただ、怒りのさなかにあっても、心の力は抜いていたい。憎しみを募らせて荒ぶる代わりに、問題の根を見つめ、絡まった状況の糸をときほぐせる、心のやわらかさを保ちたい。
貞久さんという詩人が、まさにそんな人だと思う。〈電線があり、ゆれているならば、何があったからゆれているのかといぶかり、これから何がおきるのかとはなぜ思わないのだろう。〉(貞久秀紀「希望」より)とそんなふしぎな発想をいつもする。とらわれのない雲のような心で、つぶさに小さなものごとを見つめている。
どんなに大がかりな仕掛けも、ひどいわるだくみも、こまかく張りめぐらされた思惑の糸で織り成されているものだ。その一本でも二本でもときほぐすことができたなら、あやとりの手品のようにするすると種は明かされ、権力の砂の城はあえなく崩れてしまうのではないか。
詩とは何かもわからず、ただぼくはやみくもに第一詩集の詩を書いた。そんな言葉に一条の光が当てられた、そのときの思いは忘れていない。
心がもっとも怒りに打ちふるえるときに、ぼくは自分に言い聞かせられるのか。そうありたい。心がしなやかさを忘れないなら、いくら力に踏みつけられても、風の、蝶の、水のしなやかな弱さで、心は何にもとらわれず自由だろう。
『現代詩手帖』10月号に詩を
2017.9.28
『現代詩手帖』10月号の特集「詩と料理」に、詩「七つの草を束ねて」が掲載されました。
この詩は、七草の前沢リカさんの料理からインスピレーションを受けて書いたもの。
リカさんの料理は、野菜の味が心身にしみて、ほんとうにおいしいんです。
撮影は、高見知香さん。器は陶器が須藤拓也さん、漆の木皿が角俊弥さん。大事な人のつながりで作品を発表できたこと、幸せに感じています。
詩と料理の夕べ
2017.9.4
『現代詩手帖』10月号(9/28発売)の特集「詩と料理」に、
大好きな七草の前沢リカさんとご一緒して作った、
詩と料理の作品が掲載される予定です。
もう十年近く前になりますが
七草の前沢さんは、ぼくがまだ作りはじめたばかりの
「歌こころカレンダー」を気に入ってくださり、
それから毎年、お店に飾ってくださいました。
(そのことがカレンダーづくりの励みになってきました)
七草さんのホームページ、こちらです。
おかげさまでこのたび
念願かなって、前沢さんと一緒に作品を作れることになったのは
ぼくにとって、とてもとてもありがたく大切な機となりました。
そんな雑誌刊行にあわせて、詩と料理の催しを開きます。
ちょうど十月六日は、旧暦八月の満月の日。
今年の十五夜は四日ですが、
昔は秋のお月見は、秋分に近い満月を眺めていたそうです。
仲秋の満月の暁に、
旬のごはんはお酒、お飲み物を召し上がっていただきつつ
旧暦や季節、旬の料理にまつわる話と詩の朗読を
心楽しむひとときを皆さまとご一緒できたら幸いです。
詩と料理の夕べ
「七つの草を束ねて」
日時:10月6日(金)19:00開場 19:30開始
会場:七草
151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷2-22-5
03-3460-7793
話:前沢リカ 白井明大
参加費:5500円(お食事・お飲み物込み)
・立食となります。店内の椅子にご自由にお座りいただけます
ご予約はメールにて9月6日(水)よりお申込み開始いたします。
nanakusa0831★gmail.com
(★を@に変えてお送りください)
おかげさまで満席となりました。
たくさんのお問い合わせをどうもありがとうございます。
皆さまのご参加、心よりお待ち申し上げます。
琉球新報「落ち穂」第4回
2017.8.15
琉球新報 文化面の連載エッセイ「落ち穂」に第4回です。ご一読ください。
→記事をテキストで読む
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「頼まれなかった事」
会社を辞めた同じ月のうちに、次の勤め先が見つかったのは幸運だったと思う。ただ、広告づくりの夜間講座に申し込み、学費を納めた後だった。勉強はしたい。
入社前に訳を話すと、通学しながら働けることになった。とはいえ仕事を抜けられない日も多く、結局出席不足で修了はできなかった。それでも、学べてよかった。広告に夢を持つ友人たちに出会えたのは刺激になった。
その学校の実技の先生に、コピーライターと脚本家を両立させる人がいた。朝の連続テレビドラマも手がけた鈴木聡さんだ。二足の草鞋は大変だけど、どうすればできるのか? という話になったとき「寝なければいいんだよ」と笑って答えたのを覚えている。朗らかな声でそう言われたので、試しに2晩“完徹”してみたところ、3日目には頭が働かなくて仕事にならなかった。
その鈴木聡さんが出した、とある食品のキャッチコピーを書くという課題のとき、キャッチとともにボディーコピー(商品説明の文章)まで書いてきた受講生がいた。その作品は講義で取り上げられ、高く評価された。たしかにキャッチもボディーも面白かった。
でもキャッチの課題にボディーまで書くのはルール違反じゃないだろうか? とそんな疑問に先手を打つように、鈴木さんはコピーライターの心得を1つ教えてくれた。
「頼まれた事はやる。頼まれなかった事もやる」
この言葉は後々まで役立った。広告主の言う通りに作るより、こっちの案のほうがいい、というアイデアを思いつくことはよくある。そんなとき、依頼を無視して自分の案に固執しても、上手くいった例しはない。最悪の場合、広告主は怒るし、当然やり直しになる。けれど依頼に沿った案と、アイデアを発展させた案の両方を見せて、いやな顔をした人はいない。まず相手の話を聞けば、相手もちゃんとこちらの話を聞いてくれる。
大事なことは2つ。依頼以外のことをしてもOK。でも依頼には必ず応える。当たり前だけど、制作中は頭が熱くなり、脱線しやすい。鈴木聡さんの言葉は、作り手の熱意を軌道に乗せる名言だと思う。
琉球新報「落ち穂」第3回
2017.8.15
先月からはじまった琉球新報 文化面の連載エッセイ「落ち穂」に第3回が掲載されました。転載許可をいただけたので、こちらにも。よかったらご一読ください。
→記事をテキストで読む
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「好きを大事に」
広告の仕事をはじめたはいいけれど、全く基礎を知らないまま続けるのはまずい、と焦っていた。入った会社には、未経験の自分以外にコピーライターがいなかったからだ。
入社して半年が経つころ、大きな案件が片付いたのを機に退職願いを出した。いったん広告の講座に通って勉強し直し、それから改めて職を探すつもりだった。学費は給料を節約して貯めておいた。
ところが偶然見かけた求人に応募したことをきっかけに、針路が大きく変わっていく。広告関連の雑誌をめくっていて「寂しい風景は好きですか」と走り書きされた求人広告に目がとまった。活字ではなく、手書き。もう講座に申し込んだ後だったが、履歴書を送ることにした。
一週間ほどして連絡が来たものの、指定された日時に、とあるビルのエレベーターでフロアに降り立ったとき、来る場所を間違えた、と内心たじろいでしまった。まっすぐに奥まで続く廊下の壁沿いには、画集や写真集など洋書がぎっしり詰まった本棚が並んでいる。その向こうには大きなサーフボードが寝そべっている。「奥へどうぞ」と案内された部屋は社長室だった。
いきなりの社長面接は昼すぎにはじまり、夕方近くまで続いた。その場で採用が決まり、出社は2日後から。いま思えば、その数時間に聞いた話が、ぼくにとって初めての広告講義だった。社長はコピーライターで、彼の書いたコピーのいくつかは、ぼくでも知っていた。コピーとは何か、広告は誰に向けて発信するものか、一つ一つ雑談のように話してくれた。そのときぼくの送った履歴書に好きな音楽が書いてあるのを見て、彼は言った。これが大事。自分が何を好きかが大事なんだ、と。
その話がなぜかいちばん心に残った。とくに直接仕事に役立ったわけではないと思う。むしろいまも仕事とは関係ないときに思い出す。
きっと、自分を形作るのは、好きなものなんだ。何に惹かれ、何を選ぶか。それが深いところで精神の地層を厚くし、言葉を培う。どんな逆風の中でも好きなものを手放さないことが、自分を譲り渡さずに貫く拠り所になってくれる。
「dandan」に詩を掲載
2017.5.10
講談社さんの子どもの本通信『dandan』36号に、「ことのはらっぱ」という詩と、エッセイを寄せています。素敵な挿画は、江頭路子さん。絵を見ていたら、まだ幼かったころの娘を思い出してしまいました。
くわしくは講談社絵本通信へ
『こどものとも(年長版)』付録冊子でエッセイを連載
2017.4.1
福音館書店さんの絵本シリーズ『こどものとも(年長版)』の付録冊子で、4月号からの1年間、「季節のこよみうた」という連載エッセイがはじまりました。
その季節にちなんだ旬の言葉を紹介しながら、詩や短歌、俳句などを引用しつつ、こどもと過ごす日々など綴っています。ちょっとした短めの詩も。挿画は、カシワイさん。季節の情景をあざやかに切り取ったような素敵なイラストです。
購読したら、おうちに届く絵本シリーズなのですが、取り扱いのある書店さんもあるようです。もし見かけたらどうぞお手にとってください。
くわしくは福音館書店 こどものともへ
全国学校図書館協議会選定図書に
2017.2.17
拙著『島の風は、季節の名前。 旧暦と暮らす沖縄』が、全国学校図書館協議会選定図書に選ばれました。全国のどこかの学校の図書館で、こどもたちに手にとってもらえる機会が広がるかと思うと、うれしいです。