12月

2022.12.4日

音楽

去年は鳥だったけど、今年は音楽だったな。そんなのにハマって日が暮れてった。

レコード聴いて、川辺を散歩したりサイクリングしたりしながら鳥を見て、あとはずっと家で書き物して。そんな1年だった。沖縄にいた頃と、変わらないと言えば変わらない。

「ディディの傘」を読んで、アンプは真空管がいいと思っていたから、プリアンプはそうした。でもアンプの箱のなかに入っていて、火が灯っているところは見たことがない。見えない。使ってるとしばらくするうちに筐体が熱くなるから、それでわかる。触れて、なかで燃えているんだな、とわかる。燃えて、と言っていいかどうかわからないけど。熱を帯びて、か。

代わりにパワーアンプに火が灯るのがわかる。火と言っても、豆ライトの明かり。スイッチを入れて30秒ほど?すると、メーターがカチッと光る。あまり大きな音を出さないから、メーターの針はたまにぴょこんと動くくらい。それでも、火が入ったとわかるのは面白い。

針と盤とコードとアンプとスピーカー。これらをつなぐ組み合わせによって、鳴り出す音楽が違っていく。選んだ組み合わせでいま聴いていて、これが自分が選んだ音かぁ、としみじみする。かけるレコードによって、ぴたっとハマってすごく心にぐっと来たり、ちょっと物足りなかったりする。そういうものなんだろうけれど、できればどれをかけてもぐっと来てほしい。むつかしい。

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でも物を選ぶのは(自分を選ぶもんだ、というあれ的な意味で)面白い。そうか、ぼくはこれを選んだか。こういう音になるのがぼくか。など、しげしげと聴き入っては、思ってしまう。

なんか正月の、それも元日にふっと、聴きたいように音楽聴こう、と思い立ったんだった。それでその日のうちにスピーカー注文してた。そんなこと初めてだった。結局そのポチッが今年を決めたようなものだったから、元日にありとはよく言ったものだな。本当に一年の計だった。

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季節によってもよく聴く音楽は変わったけれど、前半はロックステディをよくかけて、夏は大滝詠一全開で、秋に入った頃からビル・エヴァンスと、そしてひたすらフィッシュマンズだった。

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よく仕事したな。ほとんど毎日家にいて、けっきょく鳥取に来てからまだ一度も電車にすら乗ってなくて、ほぼ徒歩圏・自転車圏で生活して、駅向こうの本屋やレコード屋や珈琲豆買いに行くとか、それぐらい。あとは、来る日も来る日も書いていた。いつのまにか12月って感じだし。

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来年は何かハマるものあるかな。鳥とレコードと本があればいいかな。あとは、心に期すことはあるけれど、それはそのときに。

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11月

2022.11.1火

音楽

最近、レコードを聴いている。フィッシュマンズの2〜4枚目のアルバムとライブ盤をくり返し聴いて、しみじみ、じわじわ、くる。

音楽のことを考えていると、時間があっというま。

「音楽はなんのために 鳴り響きゃいいの」というフレーズを、昨日の夕方川辺を自転車で走っていて思い浮かべていた。詩は、言葉は、どうなんだろうと。

日暮れが早いから、西の山に光り残っては消えていく夕日を見送って、薄暗がりの土手を家路につく。

そんなとき、音楽のことを考えていられると、あっというまに時だけでなく、道も過ぎていく。それが心地いい。ちゃんと時間を楽しんでるとき、時間はあっというま。

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8月

2022.8.30火

未明

8月も終わりかけ。月曜日の夜から日付変わって火曜日の未明。窓を開けると涼しい風が入ってくる。虫の音も聞こえる。ここ数日、秋の気配が色濃かった。台風の影響でこれからしばらく雨がちになるとか。明日は暑さが戻るとか。そんな季節の変わり目で、涼しいも暑いも行ったり来たり。

2022年といえば、1997年9月にコピーライターになって、2012年からは本を書くようになって、曲がりになりにも25年間、書く仕事を続けてきた、ということか。25年はさすがに長いな。四半世紀だものな。ふぅ。ふりかえりたくはないけれど、よくやってきたなぁ、と静かな夜にしみじみ思う。

2002年にこのホームページをはじめたから20周年の年でもあり、今年は節目がふたつか。何か自分にしてやりたい気もするけれど、何かしようかなぁ。

近況は、またあらためてするとして。これはもう毎年の流れなのだけど、秋口に慌ただしくなりはじめると、そのまま年末までまっしぐらで、勢いは年明けも止まらずに、何だかんだと落ち着くのはようやく年度が変わってから、ということがパターン化している気がする。去年は初めて週刊連載というものをさせてもらえて、今年は連載とは少し違うのだけれど、やはり5日に1度の〆切が1年間めぐってくるというフルマラソン的な執筆をつづけていて、つまりほとんど家にいる。去年はまだ鳥を見に小山へ行く余裕があったけれど、今年はその余裕すらあまりなく、川辺を散歩するくらいになっている。また折を見つけて出かけたい。

夏の間にせめて2巻まではと思っていたアーレント『全体主義の起原』はまだ2巻の途中。9月中に読み終えたら僥倖、年内に3巻読了は…年度内にはなんとか…という気がする。勉強になるものの、現実を思うと気持ちが沈む。だからこそ読んでいる。

暑かった夏が過ぎる。秋にがしがしスパートをかけていけますように、というためには早寝しなきゃかな。今夏は夜型だったから、このへんでそろそろ寝よう。おやすー。

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3月

2022.3.13日

顛末…?

すったもんだの末に、ようやくレコードプレーヤーが決まりそう。トーンアームとか、MCカートリッジとか、スピンドルとか……いままでの人生で一度も使ったことのない単語のオンパレードだった。どうしてなのか、今年の正月にふっとスピーカーが欲しい!と思ったところから雪だるまが坂道を転がるようにゴロンゴロンと思いもよらない方へ進んできた気がするけれど、もうずっと、心の奥底のほうで音楽を求めていたんだと思う。

最近、ご近所の中古レコード店さんで、ロックステディのLP2枚組と出会った。それがすごくよくて、何度も何度もかけている。ここのところ暗いニュースが多くて気持ちがふさぎがちだったから、なおさら音楽に心を揺さぶられた。

前回の日記で郵送中と書いたカートリッジは、その後間もなく届いて、まだしんと静かに仲間を待っている。ちゃんと元気に鳴りますように! と願いつつ、ターンテーブルを選んだり、トーンアームを探したり、色々と大変だった。(思いもよらないことだったけれど、とある東京のオーディオ店のHPに在庫ありと出ていたからトーンアームの問い合わせメールをして、電話までかけたのに、こちらが初心者だと分かったせいか「在庫確認してメールで返事します」と言われた後何も返事が返ってこなかった。考えに考えて、これにしよう、と思った買い物だったから、ちょっと傷ついた)

ライカを使っているからわからないでもないけれど、敷居高いというのは、そういうことじゃないと思う。カメラ初心者だったときも、万年筆初心者だったときも、いい店というのは、門戸を叩いた素人に丁寧に対応してくれて、しかも親切に初心者コースを案内してくれた。だからこそ、もう20年近く最初の1台を使い続けていられるし(その後いくつか増えたりしたし)、毎日の書き物で何不自由なくペンを走らせることができているし、その世界の奥深さを知ることも楽しむこともできている。敷居の高さというのは、扱っている物の質の高さであり、その店が湛える含蓄の深さのことではないだろうか。

いまは仕事部屋でこれを書いていて、リビングのスピーカーではなく、小さなパソコン用のスピーカーをiPadにつないで細野晴臣の1stを聴いている。BOSEのアクティブスピーカーというやつで、2002年に神楽坂に事務所を出して、しばらくはCDウォークマンにオモチャのスピーカーを付けて聴いてたんだけど、さすがにアンプなしでは音が小さくて、新宿だったかな、このBOSEを買いに行った。ちゃんと音がして、低音がズンズン響いて、うれしかったなあ。2万円!もするの!!とすごく躊躇ったんだけど、思い切って買って、結果大満足だった。いま2022年だから、20年間一度も壊れることなく鳴ってくれている。

このBOSEにつなぐのは、CDウォークマンからiPadやMacに変わったけど、これはきっとずっと使い続けるだろうなあ。新しく来てくれた大きなスピーカーもそうしたい。

レコードプレーヤー、楽しみだなぁ。

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2月

2022.2.23水

レコードと鳥と本棚

最近、レコードと鳥と本棚のことばかり考えている。今日、お願いしている本棚の、木のサンプルが届いた。タモと楢のどちらかと思っていて、両方の木の感じが分かるように送っていただいた。ためつすがめつ見て、いまは寝かせている。どっちかな、と頭で考えないように、今夜一晩寝て、明日起きてまた考えようと思っている。

鳥はもう去年からなので、もうずっと鳥のことが頭から離れない。電線にムクドリ(多分)がとまっていた。最初1羽目に入って、隣りを見たらあと2羽いた。この辺りはムクドリがたくさんいる。大雪だから、飛ぶのも難儀だろうし、雪宿りするにも…だろうと思う。

レコードのことは最近熱に浮かされたようになっている。もう何年も、耳を無防備に晒して浴びるように音楽が聴きたいと願っていた。ただ現実は厳しく、そんな願いが叶うはずもなく、先送りされてきた。さすがに50歳になって残りの時間を意識するようになって、音楽ぐらい好きに聴かせてくれよという思いが募る。だって20年ぐらい、パソコン用の小さなアクティブスピーカーとか、iPhoneのスピーカーとか、そんなので音楽を聴いてきた。もちろんがんばって鳴ってくれて、いまも大事に使ってるけど、えいっと一念発起して今年の初めにスピーカーを迎えた。しっかりしたサイズの、昔作られたスピーカー。

これに合うレコードプレーヤーが欲しいな、と思った。CDとかはデジタル音源にして聴くことにして、でもレコードはそのまま聴きたい。どこにも行かない、人にも会わない、飲みにも旅にも行かないとなって、せめて音楽ぐらい…という気持ちになる人は少なからずいるんじゃなかろうかと想像するけれど、ぼくがそうだ。尻に火がついたようになっている。

全く無知だったから、いざ買おうとしたら戸惑うことばかりだった。プレーヤーにBluetoothもフォノイコライザーもない方が好きだし、惹かれるデザインのものは古い機種ばかりだった。ただ手持ちの何枚かの大好きなレコードを気持ちよく聴ければそれでいいはずだったのに、とんでもなく難航している。デジタルの時代にアナログ音源を聴こうというのは選択肢が限られるのだなと感じること多々。

プレーヤー選びに四苦八苦しているけれど、えいっとカートリッジだけ、真夜中に気づいたら衝動的にポチっているという初めての経験をして、買ったった。いま郵送中。数日後に届くはず。とくに何も考えずに、どんな音がするかもろくに知らずに、でもピンと来てそれにした。

ざっくりとして、誇張はなくて、その人が歌うその声がその通りにとまでは言わないけれど、誠心誠意レコードに刻まれた信号をそれなりに奏でてかき鳴らしてくれますようにと、そういうのを求めている。多分そのうち見つかるはず。ひとまず出口と入り口は決まった。

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