約束 VI








指一本分約束しよう

また明日

指一本分の約束を守ったら

僕らは少しだけつよくなれる

ねむる前

天井についている橙色の電灯を寝床から見上げて

指をかざす

なんにもみえない

耳をすます

とくに近くの外を走っていく車の音

カラスの鳴く声

そんなもの以外きこえない

寝静まっていく

やがて外は明るんでいくだろう

そして明日になる

指一本分約束した

また明日

もう今日

ぼくはその明け方にねむっていきながら

ほんのほんの指一本分のその約束をした記憶を

あたまのなかで寄せ集めながらねむっていくよ

空気がふるえている

それはぼくの息や鼓動がふるえているせい

息を吸い すこし止めて ゆっくり吐いて

空気がちぢんでくるのを感じ

目をとじている裏にまぶたがみえているような

そんな感覚の回路を切り

耳を扉を閉じるようにパタンと閉じ

ねむっていく

腕の その先の手の その先の指に

とまっているのは 今日 ううん もう昨日の時間

約束がからまっている

みえないし きこえないけれど

約束がとまっているその指とぼくがつながっている

その指の先に

またもう一本の指が 遠く間をおいてでも

つながっているのを感じる

ぼくはもうねむっている

だからぼくの指がそう感じている

それをぼくに伝えてきてる

ねむっている間にどれだけいろいろなことを

その指一本はしてくれていくことだろう

時間も空間もぼくといっしょにねむったあとで

指たちがこの世界を

ぼくたちのかわした約束のために

ゆっくりと動かす