ゴミ箱








落とし穴に落ちて、すり切れて帰る、ゴミ箱のようなぼくがいた。

ゴミ箱は何日も燃えるゴミも燃えないゴミも、
紙もプラスチックも乾電池も野菜の切れ端も、
放り投げ込まれたままで、臭い。

臭いゴミ箱のようなぼくに、決して回収車を朝待つような運命は訪れない。

やがて冷うどんや卵のカラやキノコの根元が湿気って、
腐って黴びて、落とし穴の中でどうしようもなく膨らんでいき、
それも過ぎ、やがてしぼむ。

落とし穴に落ちて、腐って黴びて膨らんで、やがてしぼむゴミのゴミ箱のようなぼくに、
まだ上から、汚したりなそうに、何か降り積もる。

捨てられもなければ、忘られもしない、
ゴミ箱のぼくは今日もいる。